HACCPを始められない!10の誤解

HACCPに対する誤解

平成30年6月13日に改正、交付された食品衛生法では、

原則としてすべての事業者が、食品衛生上の危害の発生を防止するために特に重要な工程を管理するために「HACCPに基づく衛生管理」について計画を定めなければならないこと

とされています。

そこで、「急いでHACCPの認証を取らなければ」となるわけです。
しかし、法定されたのは、「衛生管理」です

つまりHACCPの考え方に基づいて衛生管理ができているばいいのです。
何も認証まで得る必要はありません。

今回は、HACCPについての誤解を明らかにして、
間違いのない「衛生管理」を目指します。

誤解①「認証」「取得」しなければHACCPの実施を広報できないの?

HACCPは自主的に実施するものです。

承認や認証、取得しなくても、
「うちはHACCPを実施しています」とをアピールしていいのです。

HACCPを行なっているかどうかは、
HACCPの知識があればすぐにわかります。

しっかりとしたマニュアルや作業手順書があり、
温度管理などのチェックリストも、「しっかり」記録されている。
洗浄水の温度や調理温度などもコントロールしている。

それだけやっているば、HACCPを実施していると公表してもいいのです。

HACCPの構築は「継続」するもので、「終了」ではありません。
常に創意工夫、アイデアで進化していくものです。

眉唾ものなのが、「HACCP対応」という言葉です。
HACCP対応の設備や施設を準備しただけではだめです。
HACCPはモノではなく「方法」だからです。

誤解② 専門家か資格者がいなければ出来ないの?

日本において、HACCPの手法は、
最近になって一般的に知られるようになりました。

だから専門家といっても、そう多くありません。
経験ある専門家以外は、ほとんど素人と思ってください。

みな、素人で、基礎から勉強しているのです。
「専門家を雇えないし費用もない」「人材がいない」などと、
悩む必要はまったくありません。

専門的に細菌学や食品科学を学んだということも必要ないです。

細菌についての知識は知っているにこしたほうがいいですが、
最初から知っている人はいないところも多いので、
ゼロから始めるならば、まずは掃除から始めればいいのです。

正しい掃除の効果は抜群です。
細菌とゴミが減るので、食中毒事故の可能性が減ります。
異物混入クレームも減ることになります。

最初は危害細菌は一つと考え、
「洗浄すれば出て行く」、「加熱すれば死ぬ」、
「低温にすれば増えにくい」ことを徹底して覚えて実践しましょう。

そのあと追々知識を増やしていけばいいのです。

誤解③ 対応施設設備に変えなければならないの?今の作業場では出来ないの?

HACCPの実施は、基本的に施設や設備の変更は必要ありません。

HACCPは衛生管理上、安全にするためのシステムで「方法」ですから、
ソフト面、運用、マンパワーで実施するものです。

床が傷んでいて汚れがたまりやすくなって来たら、清掃を強化します。
蛍光灯がむき出しで埃が溜るのならば、清掃の頻度を増やします。

蛍光灯を飛破散防止タイプに変えるということがよく言われますが、
古くなったタイミングで取り替えることを考えればいいです。

ゾーニングや動線が上手くいかない場合は、
パーティションで仕切ったり、ラインを引く、
といった「方法」でもいいのです。

動線も、作業テーブルや製造機械の配置替え、
移動といった方法で対応すればいいです。
例えば「こちらから入ってはいけない」等のルールで対応するような、
工夫を考えるのです。

壁が壊れていたり、出入り口にすき間があって虫が入ってくる。
調理機械の調子が悪くて加熱不足になる可能性が高いというような、
実際の危害に結びつくところは、ハード面で改修の必要性が高いです。

思い切って、衛生管理体制を強化するのをきっかけに、
大改築又は新築するなどという場合もあるでしょう。

そういうときは、HACCPと一般的衛生管理が楽にできるように、
壊れず、汚れにくく、清掃しやすくしたり、
動線とゾーニングに十分配慮した工場設計にしたほうが良いでしょう。

誤解④ 膨大な書類を作成しなければいけないの?大工場でないと出来ないの?

確かに国の公的な承認を得る場合には、
かなりの書類を作成しなければならない傾向はあります。

国の承認を得るためのガイドラインが出版されているので、
その一部の書類の量をみて驚き、あきらめてしまうところも多いでしょう。
「中小工場でそこまでやるか?」と考えてしまいます。

自社の製品の安全性を高め、品質も良くして、商品力を高めるために、
自主的にHACCPを実施するのに、
わざわざ膨大な書類を作成する必要はありません

むしろ重要なところに絞り込んで行なうほうが運用に集中できるので、
効果も上がります。

例えば、清掃方法と頻度、担当者も決め、
そして、それをチェックする人を決めます。
頻度は毎日、毎週、毎月、簡単なチェックリストを作って、
交代で見るようにしたところ、見違えるようにきれいになった。

書類は、何枚かの清掃手順書と、チェックリスト一枚です。
これで、立派な一般的衛生管理の構築です。

例えば「温度設定」と「一日数回確認する」ことを、
店舗への温度計の配付と一緒に通知して、
一月一枚に測定温度を記入する列の表を付け、
このチェックリストを毎月末にファックスさせる指示を出したのです。

これでクレームが激減したそうですが、これも立派なCCPです。

誤解⑤ 製造効率が落ちるとコストアップになるの?

なんでもやり過ぎは禁物で、適正な頻度が検証しなければなりません。

調理したものが75℃以上になっているかどうかを測定するのに、
5分毎に計っていたら大変なことになります。

まず、30分ごとに計ってみる。
安定していることが確認できたら、今度は1時間毎の頻度で計ってみる。
これで数ヶ月やってみて、
2時間毎で問題がないと検証できればいいのです。

要するに、適正な頻度を運用を検証するのです。

「緊急処置」は、問題発生時に即時ラインを停止させて、
対処して、正常に戻すことです。

同じ問題が頻繁に生じる場合は、
根本的な問題をじっくり考えて解決すれば、
「緊急処置」でラインを停止させる頻度も減ります。

例えば、カッターの刃が一定期間で切れなくなるのであれば、
切れなくなる前に、そして、ライン稼動の前に交換しておくと、
「緊急処置」の回数は大幅に減ります。

これを作業場全体で取り組めば、
ノンストップの稼動体制、「恒久処置」が構築されます。

「恒久処置」の体制が確立すると、
同じ人員、同じ設備や設備で、生産は向上します。
つまり、基本的にコストが同じのまま、製造量が増えるので、
コストダウンにつながるのです。

誤解⑥ 加熱工程が無いから出来ない!

HACCPはCCPを決め、そこに集中するのです。
CCPは危害を食い止めるのに、かなりの効果があります。

CCPの代表的なものは「加熱殺菌」です。

では、加熱殺菌工程がない製品は、
金属探知機もないし、CCPもなくなってしまいます。
それでは「HACCPは出来ないではないか」と考えるでしょう。

そんなことはありません。
CCPのないHACCPはいくらでもあります

例えば、魚の切り身のポーションカット工場には加熱工程はありません。
一般的衛生管理で行います。

工程の中で、特に重要な一般的衛生管理について、
CCPの性格はないけれども、自主的なCCPにしてもよいのです。

例えば、直接食材に触れるまな板の徹底洗浄殺菌と2時間毎の交換。
例えば、カット野菜の洗浄水の塩素濃度のチェック。

出来ることはあるのです。

誤解⑦「しっかり」した検査機器がないので出来ない!

HACCPは、ほとんどの人が素人です。
監視する側にいる人も、多くがそうです。

その素人に、
「きちんとした検査機器を用意することをおすすめします」と言われると、
ハード・ソフトの両面の手間とコストを考えて、
中小の工場の経営者はHACCPを断念するのではないでしょうか。

最新の検査機器は高価です。スタッフの技術も必要になります。

実は、HACCPは簡易検査だけでも十分に構築し運用できます。
簡易検査の検証のためには、
専門機関や公的機関の検査に依頼すればよいのです。

自社で製品の簡易細菌検査を製品のロットごとに実施します。
同じ製品のロットを毎月1サンプルを専門機関に提出します。
簡易検査と専門機関の両方の結果から誤差があるかどうかをチェックします。

毎月一回程度、自社の簡易検査の信頼性を、
外部を使って検証するのです。

対象の製品、専門機関に出す頻度などは、
信頼性や誤差、コストなどを考慮して決めればいいでしょう。

誤解⑧ 監査体制の構築は大変なのでは?

ポジティブでよき監査体制によって、
以前から長らく正しいと思って行われていることを、
「問題がある」、「もっと良い方法がある」と発見されることが多い。

積極的にHACCPの向上を目指す目的があるのなら、
監査を活かすことも重要です。

まず、内部監査

一般的衛生管理を中心とした内部監査は、
現場従事者でない管理者や事務系の人が行う方法と、
現場の作業室相互で行なう方法、
そして専門チームと、三つぐらいの方法が考えられます。

一般的衛生管理は、
異物混入を始めとする多くのクレームを低減させるものであるから、
製造作業そのものを知らなくても、常識的な衛生管理、
サニテーションを評価できればいいのです。

一般的衛生管理の監査は、かなり広い範囲をカバーするので、
「きれいであるか」「忘れているところはないか」という
シンプルな視点で工場内を見なければなりません。

一方で、製造そのものに関する監査、CCP部分に関する評価は、
その製品の特質を良く知っていたほうが良いでしょう。

現場での作業室相互監査は、
作業した以外の人の目で見ることが出来るので、
「忘れ」、「不正」といったことを発見しやすいです。

外部監査は、グループで行なう方法があります。
同じ企業系統の工場が複数あれば、A工場がB工場を監査し、
B工場はC工場を監査、といった形にしたり、
三つの工場を一つのグループにして、AとBが一緒にC工場を、
BとCがA工場を、AとCがB工場を監査します。

この活動を年に何回実施するかといった頻度を決めておきます。
組み合わせも常に変えればよいでしょう。

誤解⑨ 全てを構築しないといけないの?

HACCPは土台となる一般的衛生管理の構築から行なっていきます。
これは、進捗状況に比例して効果もしっかりと現れます。

初期の頃に実施する、施設設備機器の清掃とメンテナンスがありますが、
それまでの実施方法を見直し、より確実で合理的な方法があるかを検討し、
何よりも大事な「頻度」を決めて実施します。

次第に作業場内が目に見えてすっきりときれいになっていきます。
これそのものが異物混入の原因を取り除いたことになるのです。

防虫防鼠の検討では、
入り込むスキ間をふさぐことで、侵入が抑えられます。

「ドアやゲートを開けっ放しにせずすぐに閉める」
このルールを、全従業員に理由と効果を含めて教えることで、
防除する体制を整えることが出来ます。
教えたことは教育訓練になります。

地道な活動をひとつずつ着々と進めていくことで、
工場の一般的衛生管理が充実していきます。
結果としてクレームの減少という喜ばしい結果も次第に現れてきます。

そうなれば、加熱調理後の温度管理なども始めてみます。

科学的に状態がわかり、それを修正し、
測定の方法と頻度を決めていくことで、
安全でなおかつ品質面でも美味しい製品が出来るようになります。

この活動がHACCPです。

誤解⑩ 同じ製品を作る工場なら似たものになるの?

同じ設備で同じ製品を製造していても、従業員が異なります。
一般的衛生管理も全く違うものになるのは当然でもあります。

HACCPは作業場ごとに全部違うといっても過言ではありません。

HACCPの文書作成の「書式」はないのかという声があります。
しかし、実際にはありません。
役所への届出書のように、それに書き込めばいいというものはありません。

基本的に、各工場ごとに作成すればどうかという参考書式はあります。
既に構築している工場の書類を参考にして作ってもいいでしょう。

しかし、HACCPは工場ごとに工夫をして構築するものなので、
従事者にわかりやすい文書を作成していけば、
当然作業場ごとに全部違っていくことになります。

まとめ

以上がHACCPに関する誤解をおおまかにまとめたものです。
HACCPはいつでも始められることがわかったと思います。

大げさな書類やチェックリストは必要ありません。
お金もかかりません。

まずは、清掃から始めてみませんか。

 

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