JGAPを知ろう⑥ – B.経営資源の管理 11
いよいよ「JGAPを知ろう」も、
「B.経営資源の管理」の説明に入ります。
この項目は、
各セクションの責任者を明確にし、
必要な教育訓練を行ったら、記録して残すことです。
そういう中で「JGAP指導員」の資格を取っている人が農場にいれば、
多くの項目で役立ちます。
ぜひ、指導員の育成もお考えください。
それでは順番にみていきましょう。
目次
B.経営資源の管理
11.責任者及び教育訓練
11.1 農場の責任者
必須です。
① 農場の責任者(管理点2.1参照)は、
経営者から農場運営に関する執行を委任されている。
経営者と農場の責任者が同じ人物でもかまいません。
ただし、経営者と責任者の業務内容は異なる部分もありますので、
それぞれ仕事に責任をもって対処しなくてはなりません。
② 農場の責任者は、下記に取り組んでいる。
1) JGAPに関する文書の改定について把握し、 関係する責任者に周知している。 2) 自分の担当するJGAPの管理点について学習したことを説明できる。 |
JGAPに関する文書の改定については、日本GAP協会のホームページを定期的に確認し、JGAPに関する最新の情報(総合規則、管理点と適合基準、技術レター等)を把握するという方法があります。
JGAP指導員であれば指導員証を示すことができます。
JGAP指導員からJGAPに関する指導を受けて学習し、
その内容を説明することもできます。
11.2 商品管理の責任者
必須です。
① 商品管理の責任者(管理点2.1参照)は、下記の業務を統括している。
1)商品の種類・規格の管理(品目・品種・栽培方法等) 2)梱包・包装の形態や数量・重量を含む出荷仕様 3)商品の表示の管理 4)農産物の安全や品質の確保 5)商品に関する苦情・異常及び商品の回収への対処 |
経営者が兼務してもかまいませんし、
個々の作業は分担してもかまいません。
ただし、商品管理の責任者は上記事項を統括しなくてはなりません。
② 商品管理の責任者は、下記に取り組んでいる。
1)自分の担当するJGAPの管理点について学習したことを説明できる。 2)商品管理に関する知識を向上させる努力をしている。 |
JGAP指導員であれば指導員証を示すことができます。
JGAP指導員からJGAPに関する指導を受けて学習し、
その内容を説明することもできます。
また、食品安全に関する一般衛生管理やHACCPの考え方等について、
外部の専門家または行政機関の実施する研修、指導、自己学習等で、
知識を向上させている。
学習の機会ごとに、記録を残してください。
11.3 肥料管理の責任者
必須です。
① 肥料管理の責任者(管理点2.1参照)は、
経営者が兼務してもかまいませんし、
個々の作業は分担してもかまいません。
ただし、肥料管理の責任者は下記事項を統括しなくてはなりません。
② 肥料管理の責任者は、下記に取り組んでいる。
1)自分の担当するJGAPの管理点について学習したことを説明できる。 2)施肥や土壌の管理に関する知識を向上させる努力をしている。 |
JGAP指導員であれば指導員証を示すことができます。
JGAP指導員からJGAPに関する指導を受けて学習し、
その内容を説明することもできます。
肥料管理に従事する者は、
有資格者や、行政機関の実施する研修や指導、
または自己学習・資格取得で知識を向上させます。
日本の場合、施肥に関する資格として、普及指導員、農協の営農指導員、
施肥技術マイスター、土壌医検定があります。
学習の記録は必ず残しておきましょう。
11.4 農薬管理の責任者
必須です。
①農薬管理の責任者(管理点2.1参照)は、
経営者が兼務してもかまいませんし、
個々の作業は分担してもかまいません。
しかし、農薬管理の責任者は、
農薬の選択・計画・使用・保管の業務を統括していなければなりません。
②農薬管理の責任者は、下記に取り組んでいる。
1)自分の担当するJGAPの管理点について学習したことを説明できる。 2)農薬に関する知識を向上させる努力をしている。 3)農薬使用基準に関する最新情報を入手し、過去1年間に入手した情報を 提示できる。 |
JGAP指導員であれば指導員証を示すことができます。
JGAP指導員からJGAPに関する指導を受けて学習し、
その内容を説明することもできます。
農薬使用に従事する者は、
行政または有資格者の実施する研修、指導、資格取得、自己学習等で、
知識を向上させておきます。
日本の場合、農薬に関する資格として、
農薬管理指導士(農薬適正使用アドバイザー・農薬指導マスターを含む)、
普及指導員、農協の防除指導員、緑の安全管理士、
農薬安全コンサルタント等があります。
また、日本の場合、病害虫防除所、普及指導センター、農協、農薬メーカー、もしくは農林水産消費安全技術センター(FAMIC)のホームページ等から、
農薬使用基準の変更等の最新情報を入手しておきます。
学習の記録は必ず残しておきましょう。
11.5 労働安全の責任者
必須です。
① 労働安全の責任者(管理点2.1参照)は、
経営者が兼務してもかまいませんし、個々の作業は分担してもかまいません。
しかし、労働安全の責任者は、
作業中のけが、事故の発生を抑制する業務を統括しなければなりません。
経営者や労働安全の責任者は、行政機関(労働基準監督署)の指導に従い、
労働基準法や労働安全衛生法等の法令設備機器の法令に基づく、
検査・届出・報告をはじめ、
労働安全を優先した作業環境を確保する責任があります。
② 労働安全の責任者は、下記に取り組んでいる必要があります。
1)自分の担当するJGAPの管理点について学習したことを説明できる。 2)労働安全に関する知識を向上させる努力をしている。 3)機械・設備の安全な使用方法の情報を入手し理解している。 4)農場内に応急手当ができる者を確保しており、その者が応急手当の訓練を受けていることを証明できる。 |
JGAP指導員であれば指導員証を示すことができます。
JGAP指導員からJGAPに関する指導を受けて学習し、
その内容を説明することもできます。
行政または機械メーカー等の実施する研修、指導、自己学習等で、
各自の知識を向上させるようにしましょう。
農作業安全情報センター(国立研究開発法人 農研機構 農業技術革新工学研究センター)のホームページから、労働安全に関する資料及び研修情報を入手して周知することなどが方法としてあります。
取扱説明書及び機械自体に書かれている注意事項を確認し、
指導、周知します。
新たな機械を購入した場合には購入業者から操作方法等について、
十分な説明を受け、指導、周知し取扱説明書を保管しておきます。
応急手当のできる者の証明として、
例えば、消防署が実施する普通救命講習や、
日本赤十字社の救急法基礎講習を受講し受講証明をもらっておきます。
学習の記録は必ず残しておきましょう。
11.6 労務管理の責任者
必須です。
① 労務管理の責任者(管理点2.1参照)は、
経営者が兼務してもかまいませんし、個々の作業は分担してもかまいません。しかし、労務管理の責任者は、
農場内部の職場環境・福祉・労働条件管理の業務を、
統括しなければなりません。
② 労務管理の責任者は、下記に取り組んでいる。
1) 自分の担当するJGAPの管理点について学習したことを説明できる。 2) 人権・福祉及び労務管理に関する知識を向上させる努力をしている。 |
JGAP指導員であれば指導員証を示すことができます。
JGAP指導員からJGAPに関する指導を受けて学習し、
その内容を説明することもできます。
有資格者や行政機関の実施する研修や指導、
または自己学習で知識を向上させます。
労務管理に関する資格として、社会保険労務士等があります。
学習の記録は必ず残しておきましょう。
11.7 作業者への教育訓練
重要項目
① 年1回以上、管理点2.1で示している責任者は自分の担当して
いる範囲について、農場内の該当する作業員すべてに、
JGAPに基づく農場のルールの教育訓練を実施している。
各責任者は、教育訓練の結果を記録をしている。
記録には実施日、参加者、実施内容が記載されている。
また教育訓練に使用した資料を提示できるようにしておく。
わざわざ時間をとっての座学など出来ない場合は、
たとえば、食事の後の数10分くらいで伝えた内容や、
業務、作業中に伝えた内容なども教育訓練に含まれます。
重要なことは、実施した日、伝えた人、その内容を、
きちんと記録に残しておくことです。
② 作業者に外国人がいる場合には、
その作業者が理解できる表現(言語・絵等)で教育訓練を実施します。
記録には、教育訓練で使用した資料も添付しておきましょう。
11.8 公的な資格の保有または講習の修了
必須です。
法令に基づく公的な資格の保有、
または講習修了が必要な作業を行っている作業者は、
必要な講習の受講や試験に合格していることを証明できようにしておく。
免許証は携帯。
証明用にはコピー(写し)等を保管しておく。
例えば、労働安全に関する資格・講習として危険物取扱者(消防法)、
乾燥設備・ボイラー・フォークリフト・玉掛等の技能講習(労働安全衛生法)などがあります。