児童養護施設-原則18歳の退所の陰
目次
痛ましい事件
先日、東京・渋谷区の児童養護施設で、元入所者の若者に施設長が胸や腹などを刃物で刺されて亡くなるという痛ましい事件が起こりました。
犯人の元入所者の若者は、「施設に恨みがあった。施設の関係者であれば誰でもよかった」と警察の取調べに対して供述しているとものことです。
この容疑者も施設で3年間過ごしたのち18歳で退所し就職しました。
結局、仕事が長続きせず、職場を転々とし、最後は家賃滞納で、去年9月に退去させられたそうです。
それから事件発生まで半年近くの間、ネットカフェなどで寝泊まりを続けていたといいます。
容疑者の年齢が22歳ですから、社会に出て4年ももたなかったわけです。
児童養護施設とは
児童養護施設は児童福祉法に定められた児童福祉施設の一つです。
予期できない災害や事故、親の離婚や病気、また虐待のように不適切な養育を受けているといったさまざまな事情で、本来の家族による養育が困難な子どもたちがいます。
そこで施設では、家庭に替わって2歳からおおむね18歳の子どもたちが、施設で協調性や思いやりの心を育みながら生活しています。
現在、児童養護施設は全国に約600か所あり、約2万8千人(昭和55年からの推移をみても、だいたい約3万人前後)が生活しています。
進学については、約8割が高等学校に進学しています。
実は、私の実家の前にも児童養護施設があり、同級生も数人が施設の出身者がいます。
その同級生たちが幸せにくらしていることを祈るばかりです。
18歳の壁、いきなり世間に放り出される感覚
被害者の施設理事長はその著書で、
「18歳以降、社会的養護の枠から外れ、自立していかなければいけない現実。それは私たちが想像する以上に困難なものであると改めて認識し直す必要がある。この問題を子どもたちの自己責任論で終わらせない」
との思いを綴っておられ。
子どもたちの18歳以降の人生を深く考えておられたことがよくわかります。
児童養護施設の子どもは、約63%が就職で進学は約30%。
返済の必要のない「給付型奨学金」が創設され、
今後はすこしずつ大学進学者も増えてくるかもしれませんが、
成績などの要件もありまだまだ難しいと思います。
奨学金があっても、家賃、食費などの生活費を稼ぐためにアルバイトばかり。
そのような環境では友人もできにくく、孤独感が拭えないままの日々を送る人がほとんどでしょう。
就職に際しても「足許を見られる」でしょうから、
良い条件のところに就職できるとは限りません。
3年以内に約45%が離職しているのもうなずけます。
施設を退所すれば、ほとんどが「ひとり」です。
施設で共に過ごした仲間とも疎遠になります。
そういう孤独感をもったまま「社会に放り出される」という感覚に、
わたしたちも理解を示すことが重要です。
自分の将来や進路のミスマッチとその修正
子どもたちは、
やがて「自分だけが苦労している」という思いを抱えてしまうそうです。
18歳で自分を律し、心身のバランスをとることは難しいでしょう。
(わたしは無理です)
「これまで苦労してきたのに、この先もすっとか…」という気持ち。
同じ経験をした人と繋がることのできる場や、
自分が困った時に相談できる場があることを、
最後に頼る場があることを周知していかねばなりません。
仕事のミスマッチも解消が必要です。
世間では労働力不足と言われています。
それなのに就職してから約45%も離職してしまうのか?
人とコミュニケーションをとりたいのに叶わず、
孤独な人も多くいます。
そういう人たちを繋げることはできないでしょうか?
児童虐待により入所者も増える恐れもあります。
2022年4月には18歳は「成人」です。
子どもたちを社会から孤立させない取り組みが必要です。