JGAPを知ろう⑫ – C.栽培工程における共通管理 24.3~24.6

目次

24.3農薬の使用と記録
24.3.1 防除衣・防除具の着用

必須です。

① 農薬使用にあたり、作業者は農薬のラベルの指示に従って適切な防除衣・防除具を着用している。
※ 例としては、農薬ラベルの指示通りのマスクであることを販売店に確認してから購入している。

② マスクについては、使用回数・期間の指定がある場合には、それに従う。

24.3.2 防除衣・防除具の洗浄

必須です。

① 農薬使用後は、防除衣・防除具による交差汚染を防いでいる。
※ 農薬散布作業後は収穫作業をしない。他の作業 をする場合は着替えや手洗いの後に他の作業に入る。

② 再利用する防除衣及び防除具は使用後に洗浄している。

③ 防除衣は着用後に他の服とは分けて洗浄しており、手袋は外す前に洗っている。

④ ゴム長靴は靴底までしっかりと洗っている。

⑤ 破れたり痛んだりした防除衣やマスクの汚れたフィルターは、新しく替えている。

24.3.3 防除衣・防除具の保管

重要項目

防除衣・防除具を農薬及び農産物と接触しないように保管している。また、乾かしてから保管している。
※ 防除衣と防除具を農薬保管庫に保管しないなど。

24.3.4 残液の処理

重要項目

① 調製した散布液は、対象圃場で使い切るようにしている。

② 農薬散布後の残液の処理は、行政の指導に従っている。行政の指導がない場合には、自分が管理する特定の場所で、農産物や水源に危害がない方法で処理している。
※例えば、残液は、作物の植わっていない自分の土地で作業の動線や水路から離れた雑草の生えた区画に散布して浸透させている。

24.3.5 農薬散布機の洗浄と洗浄液の処理

必須です。

① 散布設備に農薬が残らないような洗浄手順を決めた上で、散布後は散布機、ホース、ノズル、接合部及びタンクを速やか に洗浄している。

② 散布設備の洗浄は、自分が管理する特定の場所で、農産物や水源に危害がない方法で行っている。

③ 洗浄液は管理点24.3.4②と同様の方法で処理している。

※ 複数の作物に同じ農薬散布機を使用している場合には特に注意している。
※ 洗浄液を畝間に処理していない。
※ 薬剤の付着した状態で、タンク等を他の目的に使用していない。

24.3.7 農薬使用の記録

必須です。

農薬を使用した場合、下記の項目を記録している。

① 対象作物(農薬登録における適用作物名)
② 使用場所 (圃場名等)
③ 使用日
④ 農薬の商品名
⑤ 使用目的(適用病害虫・雑草名)
⑥ 有効成分
⑦ 希釈倍数が指定されている場合には希釈倍数と散布液量、使用量が指定されている場合には10a当たりの使用量
⑧ 使用時期(収穫前日数等)
⑨ 使用方法(散布機等の機械の特定を含む)
⑩ 作業者名
⑪ 農薬管理の責任者による検証

※ 農薬使用計画に④⑤⑥⑧⑨を記載しており、計画通りに使用した場合、農薬使用の記録には④のみを記載し、⑤⑥⑧⑨を省略してもよい。

※ ⑦は散布液を調製する際に計量した原液量を記録することを推奨する。
※ ⑨使用方法には、散布、株元散布、土壌灌注等がある。
※ ⑪は、農薬管理の責任者が農薬使用基準を満たしていることを確認し、押印するなど。

24.4 農薬の保管
24.4.1 農薬保管庫の管理

必須です。

① 農薬を農薬保管庫外に放置していない。

② 農薬管理の責任者が農薬保管庫の鍵を管理し、誤使用や盗難を防止している。

③ 農薬保管庫は強固であり、施錠されており、農薬管理の責任者の許可・指示なく農薬に触れることができないようになって いる。

④ 毒物・劇物及び危険物は、それらを警告する表示がされており、他の農薬と明確に区分して保管している。

⑤ 立ち入り可能な農薬保管庫の場合、通気性がある。

⑥ ラベルが読める程度の明るさがある。

⑦ ラベルに保管温度に関して指示がある場合には、それに従っ ている。
※ 例えば、農薬保管庫に入りきらない大きな容器の農薬は、倉庫全体を保管庫とする方法がある。その場合、出入りの都度施錠をし、農薬管理の責任者の許可・指示なく開錠できないことなど管理点24.4全体を満たす必要がある

24.4.2 誤使用防止

重要項目

① 農薬は、購入時の容器のままで保管されている。
※ 飲料容器、飲料が入っていた容器等への移し替えは、誤飲の危険性があるため厳禁です。

② 農薬の取り違えを起こさないように保管している。
※ 作物に使用するもの、作物以外に使用するもの (除草剤や非農耕地に限って使用が許可されているもの)を分けて保管している。
※ 使用作物ごとに棚を分けて保管している。
※ ラベル表示がわかるように、また、わかりやすくしている。

③ 使用禁止農薬、登録失効農薬、最終有効年月を過ぎた農薬 は誤使用を防ぐため、区分して保管している。
※ 使用禁止農薬については回収されるまでの一時保管であり、日本では、農協等の農薬販売者により速やかに回収してもらう必要がある。

24.4.3 農薬混入・汚染防止

重要項目

① 使いかけの農薬は封をしている。

② 農薬の転倒、落下防止対策を講じている。

③ 農薬の流出対策を講じている。

④ 保管庫の棚が農薬を吸収・吸着しないような対策を講じてい る。

⑤ 農薬もれに備えて、こぼれた農薬を処理するための農薬専用の道具がある。
※ こぼれた農薬を処理する道具としては砂、ほうき、ちりとり、ゴミ袋などを準備しておく。

⑥ 農薬が農産物や他の資材に付着しない対策を講じている。
※ 農薬保管庫に他の資材を入れない。農薬保管 庫の近くに種苗や農産物を置かない。
※ 液状の農薬は粉剤・粒剤・水和剤の上に置かない。開封した農薬ボトルは深さがあり穴の空いていない容器に入れる。

24.4.4 危険物の保管(農薬)

必須です。

発火性または引火性の農薬(油剤・乳剤等の危険物)を保管している場合は、農薬の販売店・メーカー等に保管方法を確認し、その指示に従って保管している。また、危険物の表示をしている。

日本では、消防法による危険物の指定数量管理が該当する
(管理点19.1参照)。

24.4.5 農薬の在庫管理

重要項目

農薬の在庫台帳には、入庫ごと、出庫ごとの記録がつけられており、記録から実在庫が確認できる。

24.5農薬のドリフト
24.5.1 ドリフト被害の防止

必須です。

◆ ドリフトとは、散布された農薬が、目的外の作物に付着してしまう現象のことです。
【ドリフトの問題点】
・近接作物に農薬がドリフトした場合、残留に関する基準値オーバー
  (流通禁止、産地のイメージ悪化)
 → 参考:農産物の農薬残留規制が大きく変わります。

・薬害の発生など 
  近接する住居や道路等に農薬がドリフトした場合
・近隣住民・通行人に対する迷惑や健康被害
・洗濯物や干した布団に付着する
・乗用車等が汚れるなど

① 自分の圃場を含む周辺圃場で栽培されている作物を把握し、そこからの農薬のドリフトの危険性について認識している。
灌漑用水を通じての農薬の流入などについての危険性も認 識している。

② 周辺の生産者とコミュニケーションをとる等によって、周辺地 からのドリフト対策を行っている。
※ コミュニケーションの内容としては、農薬散布や収穫時期の連絡、散布方法を話し合う等がある。
※ コミュニケーションで改善しないドリフトについての取り組みとして
  ・立札をする
  ・緩衝地帯を設ける
  ・防風ネットを設ける など

24.5.2 ドリフト加害の防止

必須です。

自分の隣接圃場を含む周辺地への農薬のドリフトを防ぐ対策を講じている。
地下水・河川等の水系へ農薬流出を防ぐ対策を講じている。
土壌くん蒸剤を使用する場合は、ラベルに従い被覆等をしている。

【加害の防止例】
 ・風の強さや風向き等、天候や時間帯の注意
 ・散布の方向や位置の注意
 ・細かすぎる散布粒子のノズルの不使用
 ・適切な散布圧力
 ・飛散しにくい剤型(粒剤等)の農薬の使用
 ・近隣生産者とのコミュニケーション
 ・緩衝地帯を設ける
 ・きのこ類の原木栽培において、伏せ込み地(ほだ場)へ の除草剤
  散布は、ほだ木に飛散しない

24.6 残留農薬に関する検証
24.6.1 残留農薬検査のサンプリング計画

必須です。

① 残留農薬検査の計画を文書化している。

② 残留農薬検査の計画は農場内で使用した農薬及びドリフトの 可能性がある農薬のうち、残留の可能性が高いと思われる 品目・農薬成分・収穫時期・場所からサンプルを選んでいる。

【残留の可能性がある農薬成分】
残留の可能性がある農薬成分には、次のものがある。
 ・周辺作物からのドリフトが懸念される成分
 ・同じ農薬散布機を使用して栽培している他の作物に散布した成分
 ・過去に使用した残留性の高い成分
 ・収穫から近い時期に散布した成分
 ・使用回数の多い成分
 ・作物に残留しやすいという知見のある成分団体の場合、
 「団体における残留農薬検査の農場のサンプリングに関するガイドライン」に従っている。

③ 上記②で特に残留の可能性が高い成分を特定できない場合 は、多成分一斉分析を行い、リスク評価に役立てている。

24.6.2 残留農薬検査の実施

必須です。

① 管理点24.6.1に従って、年1回以上残留農薬検査を行い、農薬使用が適正であることを確認している。
基準値を超過した場合には、管理点9.1.2の手順に従い、記録を残している。

② 残留農薬検査の結果を保管している。

 

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